【長井先生コラム】「生きるエネルギー」
2025.06.25
ずっと学校に行っていない10代の子が心療内科の診察室にやってきました。
毎日、何してる?
―「何にもしていない。ボーっとしている」
将来、夢とか希望とか何かしてみたいことある?
―「何もない」
今までの人生で楽しかったことあるでしょう?
―「う~ん…。ゲームかな」
これは、ずっと学校に行っていない10代の子との心療内科の診察室での会話です。一方で、音楽やスポーツそして勉強とエネルギッシュに活動している10代の子もたくさんいます。
オーストリアの分析医V.Eフランクルは、ユダヤ人であるためにアウシュビッツ強制収容所に収監されました。しかし彼は精神分析医なので、死と隣り合わせの状況下でも「生き残る人」と「死にゆく人」の心の分析をして『生きる意味』を考えたのです。彼は著書「夜と霧」の中で、強制収容所で生き残ったのは「生きて戻れたらあれをしよう、これをしよう」…と夢を持っていた人たちだったと書いています。夢は生へのエネルギーを生み出すのです。
10代の子はまだ人生経験も短く何をしていいかすらわかりません。かといって家でボーっとしたりゲームばかりしていて、「あれは好きじゃない」「これは失敗したら嫌だからしたくない」と避けてばかりいると、やがて生へのエネルギーは失われてしまいます。いろいろな経験をして自分のやりたいことを見つける時期が10代なのです。夢さえ見つければ、生へのエネルギーは充満してきます。
親は、子供を、家族以外の多種多様な価値観を持った人たちと触れさせ、見知らぬ土地に連れて行って見聞を広げさせるなど、常に子どもの脳を刺激する機会を与えなければなりません。最初は嫌がっても、すぐに全てを受け入れるようになるでしょう。10代の子の適応能力は親の何倍も優れているのですから…。