【長井先生コラム】「のちの人格形成に大きな影響を与える家庭環境」
2025.04.22
私たち心療内科医は、一通り現在の症状についての問診を行った後、患者さんの子供の頃の家庭環境について尋ねることがよくあります。
親が子供に過干渉して自分の思い通りに支配したり、親の身勝手な感情を子供にぶつけたり、夫婦の不和に子供を巻き込んだりすると、子供はいつも親の顔色をうかがったり、自分の意志や感情を抑えることが日常的となってしまい、大人になってからも、周りの人に対して『人に嫌われたくない、相手を傷つけてはいけない』という思いから、自己主張をせず人の言動に振り回される人間になってしまいます。
ただし、そんな残念な家庭環境に育った子のすべての子供がそうなるわけではなく、多くは同年齢の友人や社会との関わりにおいて自分自身を磨き、少しずつ強い心を身につけていきますが、やはり、子供にとって居心地の良い家庭であるに越したことはありません。
逆に子供の心に親が振り回されるのもよくありません。子供はまだ自分でコントロールできないため、時に精神的に不安定になります。親は『子供が精神的に不安定なのは自分のせいだ』と思い込み、子供が困難な状況に陥ると、すぐに手を差し伸べ、子供の心の中に入り込み抱きしめてしまいます。これでは子供はいつまでたっても精神的自立ができず、いつも誰かに頼らなければ生きていけなくなり、成人して困難な状況に置かれるとすぐに親に相談、親もそれに応えてしまいます。
今、子供の数がどんどん減少しています。だからこそ大切にしなければならない…のではなく、大人になってからも力強く自立できるようにバックアップしてやらなければならなりません。親は子供の友達にはなれても決して親友にはなれないのですから…。