賀茂台地の昔話 ~ヘビとカエルとミミズとナメクジ(福富町)~
2020.12.01
今、地球上にいる動物や虫は、もとは天国にいたんだそうです。
それを神様が次つぎ地球へ送りこんだので、いつの間にか今日(こんにち)のようにたくさんのものが地球上ですむようになったといいます。
ある日、神様はヘビとミミズとナメクジを地球へ送りこもうとして、その参集(さんしゅう)を命じ「これからお前たちを地球で住めるようにしてやる。地球には悪いバイ菌(きん)がいて人間を困らせている。お前たちはそれを掃除(そうじ)するのだ」と、命令をされました。
このとき、早く地球へ行きたくうずうずしていたカエルが「よし、それではわしが先にいって地球のバイ菌を退治してやろう」と、神様の命令もないのに、ヘビやミミズ、ナメクジが出発の準備(じゅんび)に手間(てま)どっている間に、梅雨の雨雲にのって一足先に地球におりてきました。
そして、地球に来られたうれしさに、そこらじゅうをはねまわってケロケロ、ギャアギャアと鳴きわめきました。
それが習慣(しゅうかん)となって、今でも梅雨どきになるとああして鳴きわめいているのだそうです。
ヘビやミミズ、ナメクジは自分より後になると思っていたカエルが先に来て、わがもの顔にさわいでいるのを見て面白(おもしろ)くありません。
とくに気の短いヘビは「神様の命令を守らなかった奴(やつ)は許しておけぬ」と、おこってカエルの足にパクリと噛(か)みつきました。
カエルは泣きながら、ミミズに「ヘビに許してやれといってくれ」と頼みましたが、ミミズは「神様の命令を聴かなかったお前が悪い」といって、相手にしてくれません。
カエルは「折角(せっかく)こうして頼んでいるのに聞いてくれないのか」と、おこって、パクリとミミズを食べてしまいました。
それからはミミズはカエルを見るとすぐ土の中へかくれるようになりました。
また、ヘビもカエルをたべるとき、先(ま)ず足からぱくつくようになったといいます。
一方、ナメクジは、神様のいいつけで、地球上のバイ菌を掃除するため一緒に下(くだ)って来た仲間のヘビが、弱いものをいじめては、いばりかえっているのが腹がたってなりません。
そこで、自分の体から出るぬるぬるをヘビの眠っているすきをみてぬりつけてやりました。
すると、どうでしょう。
ヘビのうろこがカチカチに乾いてしまって、前へ進むことができなくなりました。
それからというものは、ヘビはナメクジのいるところや、ナメクジのいざった跡のあるところを一番嫌うようになり、さけてとおるようになったそうです。
一番きらわれもののヘビが、今度はナメクジをおそれるようになったものですから、ナメクジは地球上で「わしよりえらくて強いものはおらん」と、いばりはじめ、人間のいる家へも、ことに台所などへどんどん入っていくようになりました。
人間もまた、この気味の悪いナメクジをどのように退治してよいのかわからず、とくに女の子などナメクジをみただけで気分が悪くなったり、踏んづけて転んで気絶(きぜつ)したりする者が出て来たりしましたが、どうしたらよいのか、わいわい騒いでおるばかりでした。
そのため、ナメクジは人間がそのように騒ぐのが面白くなり、人間でもこうなったのだから、地球で一番えらいのはやっぱり自分だと、ますます図にのり、人間が悲鳴(ひめい)をあげるような気味の悪いことばかりしておりました。
これをご覧になった神様は「不都合なナメクジ奴め、わしの命令にそむいて」と、塩を撒(ま)かれますと、ナメクジはたちまちとけて消えてなくなり、人間もまたそれを見習ってナメクジを見ると塩を撒くようになったのだそうです。
それにしてもこの話、何か人間世界にもあてはまるような気がしますね。とくにあの核実験(かくじっけん)。神様に塩を撒いてもらいたいものです。
(『福富の伝説と民話』より)
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